| 第2回 |
うつ病について
名誉院長 假屋哲彦 |
| 1.うつ病とは |
人間は、いろいろな疾患あるいは状態において、抑うつ状態を呈するが、その典型的なものがうつ病です。双極性感情障害{躁うつ病}といって、躁病とうつ病の両方が認められる型におけるうつ病と、非双極性感情障害、すなわちうつ病だけがみられ躁病がみられない型のうつ病があります。共に感情{気分}障害という診断的カテゴリーに入ります。
最近は操作的診断基準を用いて、できるだけ診断を統一するようになってきておりますが、それによると、生涯有病率は15%にも達すると考えられ、重症のものだけでも5%位と考えられます。このように多くの人にみられ、誰でもがかかり得る疾患ですが、うつ病になりやすい人となりにくい人とがあります。一生に一回だけ罹患する人もありますが、反復することの多い疾患で予防にも注意が必要です。
うつ病は、よく心の風邪ともいわれ、適切な治療により治癒する疾患ですが、風邪もこじらすと肺炎になったり重症になるように、うつ病もこじらせると遷延したり重症となりますので、できるだけ早期に適切な治療を受けることが大切です。次に述べるような症状や治療、注意点を参考にされて、うつ病をこじらせないようにする必要があります。
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| 2.うつ病の症状について |
| うつ病になると通常、抑うつ気分、興味と喜びの喪失、活動性の減退による疲れやすさや活動性の減少がみられます。その他、集中力や注意力の減退、自己評価が低下し自信を失う、罪責感と無価値感、将来に対する希望を失い悲観的な見方、死にたくなる、不安、焦燥などの症状がみられます。また、うつ病には身体症状もみられることも多く、不眠や食欲不振、体重減少などの消化器症状などにも気をつける必要があります。内科的検査でとくに異常なく、抑うつ気分が軽い場合など、うつ病が見逃されることもありますので注意が必要です。なお、午前中は不調でも夕方になると良くなるという日内変動もうつ病の特徴の一つです。 |
| 3.うつ病の症状について |
うつ病は最も人間的な疾患の一つともいえます。一般に人間は、疲労や環境の変化、ストレスの増強などで抑うつになり易い傾向があります。うつ病になりにくい人でも、これでもか、これでもかと過酷なストレスが続くとうつ病が誘発されます。
うつ病には、例えば脳内セロトニンやノルアドレナリンなどの神経化学伝達物質や視床下部‐下垂体‐副腎皮質系の障害などが関与していると考えられております。
また、うつ病になり易い人は、仕事熱心、凝り性、徹底的、几帳面、責任感が強く、過度に良心的な性格である場合が多く見られます。また、双極性うつ病の人は、社交的で、情味があり活発な性格の人であることも多く、感情の易変性がみられます。過酷なストレスは、うつ病の誘発因子となりますが、一方で、仕事を成功させて無事終えることができて、ほっとした時にもうつ病がおこることがあり、人間の心理と脳の働きは複雑です。良いことでも悪いことでも環境の変化に気をつけることが大切です。 |
| 4.うつ病の治療と予防 |
うつ病をこじらせない為にも、早期発見、早期治療は重要です。以前から思春期や初老期には気をつける必要があると言われてきましたが、現代では、働きざかりの年代や老人も含めてあらゆる年代の人にとって気をつけなければならない疾患といえます。うつ病にとって適切な休息をとることは、治療的に極めて重要です。それも気にしながら休むのではなくて、本当のリラックスした休息が重要です。
外来での治療も多く行われますが、重症の場合、遷延している場合、環境の改善が必要な場合などには入院治療が必要となります。また、薬物療法が治療の中心となります。従来の抗うつ薬の他に、最近ではSSRIやSNRIといった新しいタイプの抗うつ薬も多く使われるようになってきており、最近の薬は副作用が少なくなってきております。一般に抗うつ薬の効果の発現には、ある期間を要しますので、効果発現までに例えば便秘などの副作用で服薬を中止してしまう人もおりますので注意が必要です。主治医に自分の症状をよく話して、適切な薬を選んでもらい、副作用などについてもよく説明してもらうようにして下さい。不眠があれば、よく眠れるようにしてもらうことも大切です。薬の量の増減や服薬期間も大切な問題ですが、主治医とよく相談してください。医師は時間の許す範囲で、適切な精神療法も行なってくれるでしょう。また、病院には医師や看護師の他に、精神科ソーシャルワーカーや臨床心理士などがいていろいろな職種の人が相談にのってくれます。病院のシステムの中で気楽に相談するようにして下さい。
最後に物事に対する考え方や感じ方を悲観的にならずに、ポジティブにとらえていくことも重要で、うつ病の回復期や予防に役立ちます。反復されることの多いうつ病では、予防的に有効な薬も用いられます。
うつ病になると死にたくなることもしばしばみられますが、一時的なもので、うつ病がなおれば消えてしまいます。うつ病の罹患中は、判断力や決断力も低下しておりますので人生に関わる重大なことは、すべて保留して決定せずに、深刻にならずにうつ病の治療に専念して下さい。よくなると、なんて馬鹿なことを考えていたんだろうと思う日が必ずやってきて、また楽しい人生が開けます。 |
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| 第1回 |
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統合失調症を説明するために、これまでにいろいろな表現がされていますが、現在世界的に標準とされているものは、「考える道筋や内容、感じ方、感情の動き、意欲などの面で、特徴的な障害が一定期間以上存在するもの」というものです。具体的にどのような症状が見られるかは、後に説明します。
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統合失調症にかかる原因としては、これまでに性格、環境、ストレス、遺伝、脳の構造などいろいろなものがいわれてきました。この他にもある種のウイルスや免疫の異常などが関係しているともいわれています。しかし最も有力なのは、これらの事が1つだけで原因になるのではなく、これらを含めた数多くの事が影響して、脳の中のドーパミンというホルモンが増えることだという説です。
例えば胃潰瘍という病気はストレスがかかる事で、胃液の分泌が増えてしまい起こります。もちろんその人の性格や環境なども胃潰瘍へのかかりやすさには影響するでしょう。とすると、周囲のいろいろな事によって体の調節のバランスが崩れてしまうことで病気にかかるという点では、精神科の病気も内科の病気も同じだといえるのです。
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体型としては細長型で、性格としては内気、小心、無口、非社交的、神経質、まじめ、融通が利かない、対人緊張が高い、敏感、無頓着な人がかかりやすいといわれています。頻度は全人口の約1%といわれていますから、山梨県内に約9,000人、日本全国で1,200,000人の統合失調症の方がいる事になります。
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症状は大きく2つに分かれます。1つは外に出る華々しい症状で、もう1つは内にこもる静かな症状です。
外に出る華々しい症状はかかり始めの頃に多くみられ、実際にはないものが見えたり聞こえたりすること、事実とは違うことを信じ込み訂正できないこと、話し方や行動の仕方にまとまりがないこと、興奮すること、眠れないこと、食欲がないこと、周りをすごく怖がること、表情が硬くなること、といった症状があります。この他にも顔をしかめたり、思い出し笑いをしたり、全く動けなくなってしまう事、独り言を言う事などもみられます。
内にこもる静かな症状は華々しい症状がおさまった後に多くみられ、やる気がでないこと、感情の変化が少ないこと、他者との交流を避けて閉じこもること、いろいろなスピードが遅くなること、といった症状があります。
統合失調症にかかっている時は、これらの症状がみられますが、これらがみられるからといっても必ずしも統合失調症だとは限りません。
これらは医学的に表現した場合の症状ですが、実際の生活の中ではこれらの症状をもとに、規則正しい生活ができない、身だしなみがきちんとできない、人付き合いが苦手、集中力・持続力が足りない、融通が利かない、といった状態になりやすくなります。
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治療にはいろいろなものがありますが、その中心でありけっしてはずせないのが薬です。これを中心としていわゆるカウンセリング、作業療法、デイケア、社会技能訓練、作業所などのいろいろな手段を使います。
薬は病気の原因である脳の中のドーパミンを少なくする働きがあります。これで華々しい症状にはかなりの効果がありますが、静かな症状にはこれほどには有効ではありません。しかし最近では静かな症状にある程度有効な薬も発売されました。またドーパミンを少なくするという働きそのものにより、体が硬くなったり、唾液が多くなったりといった副作用がでることもあるため、この副作用を止める薬を一緒に出すこともあります。副作用止めの薬はドーパミンとは別の道筋で副作用を抑えるため、病気に影響を与えることはありません。薬は一般的には効き目が強いほど副作用も強い傾向がありますが、最近は効き目に比べて副作用の軽い薬も発売されています。
デイケアは主に静かな症状を目的にして治療を行います。やる気がでないことや他者との交流を避けて閉じこもることに対して、少しでも何か話したり動いたりして活動を増やしたり、人づきあいの方法を学んだりといったことです。作業療法もほぼ同じ目的で行われます。
その他の生活のしにくさを改善するために、生活技能訓練が行われることもあります。
また、生活のしにくさの改善や、服薬・通院の中断による病状の悪化を防ぐために訪問看護が行われることもあります。 |
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病気になった場合の接し方としては、まずどのような場合もその人に対する尊敬と将来の利益を考えることが大原則です。そして華々しい症状に対しては、なるべく不安を与えないような表情や動作、口調で接することや、本人の言うことをまずは「そうだね」と受け止めながらも、「でも私は違うと思う」ということも一緒に伝えるのが良いでしょう。
静かな症状に対しては、本人が疲れすぎない範囲でこまめに話しかけたり、一緒に何かしたり、何かを感じたりするのが良いでしょう。ただしいずれの場合もすぐに効果を求めずに、長い目で見て、焦らずにやる方がよいでしょう。
病状が悪化する場合、全くきっかけがない方もいますが、ストレス、服薬や通院の中断・減量、生活環境の変化がきっかけになる方も大勢います。ストレスや生活環境の変化を全くなくすことはできませんが、このようなことが予想されるときには主治医などに相談しながら慎重に進めるのがよいと思います。また、自己判断での薬の調節は、吉に出ることも凶に出ることもあります。薬への疑問や不満があるときにはそのことをありのままに主治医に伝えるのが得策でしょう。
しかし、不幸にも病状が悪化してしまった場合には、なるべく早く病院に相談して対策とることが大切です。軽い状態で対策をとったほうが、良くなるまでの時間が短くてすむことが多いですし、御本人の苦しみも少なくてすみます。
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| 統合失調症に限らず精神科の疾患は、よくなるまでに長い期間がかかりますし、わからない事もたくさん出てくると思います。そのような時は自分だけで悩まずに、病院のスタッフに気軽に尋ねて下さい。病院のスタッフにはどんな事を言っても、それが病気に関係した事であれば、けっして気を悪くするような事はありません。ですからなるべく楽に過ごせるために、病院を上手に利用する事が賢い方法だと思います。 |